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予期せぬコレクターズ・アイテム [others]

 生物をコレクションするという行為は気乗りするものではなかったが、いつの間にやら子宝草が集まってきてしまったので開き直ってコレクターとか公言することにした。そういうつもりはないのだが。。。とか言い訳っぽいし、何より最近は確かに集めてたりもしたので仕方ない。
 そんなコレクションの中で特別なものもある。タイプ・クローンである。 他のマニアや愛好家はこれをなんと呼んでいるのか知らないのではあるが、これはタイプ標本株から殖やした株の事を言っている。子宝草の仲間のタイプ・クローンが幾つか入手できたので特別扱いしている。

 ではタイプ標本とは何か、ごく簡単に説明すると動植物を新種記載した際に後の研究者の(同定の)拠り所とするために、その新種の標本を保存しておくシステムになっている。極端な話をすると新種の名前はその標本の生物に付けられたと言っても良い。それをタイプ標本の中でもホロタイプholotypeと呼び、種を規格するための最後の根拠となるタイプ標本である。
 ある個体がその標本と同種かどうかの判断は同定の問題であるが、タイプ標本といえども有機物である。どんなに保存状態が良くとも100年も経つと劣化するし、そうでなくとも戦争・テロ・天災・盗難・倒産など博物館やその他施設での保管が失われたり、損なわれたりする可能性は多々ある。そうでなくとも古い時代のタイプ標本は様々な問題を孕んでいたりする。そこで後に失われたホロタイプを補完するレクトタイプlectotypeやネオタイプ neotypeを制定する。また動物にはないシステムとして植物にはエピタイプepitypeというものがあって、他のタイプ標本だけで同定が困難な場合に指定される。

 前置きが長くなったが今回の主題はこのレクトタイプとエピタイプの話題である。2016年に黒死蝶Kalanchoe humificaの再記載を発表したグループが、昨年(2018年)次の論文を発表した。
Miyata et al. (2018) “Lectotypification of Kalanchoe humifica (Crassulaceae)” Novon 26:214-217
 かくして我が国初所蔵のBryophyllum節のタイプ標本(エピタイプ epitype)が(多分)東大に保存されることになったのだ。
 これはK. humificaの原記載(Descoings, 2005)に不備があるので一連の論文で補完した形になる。原記載には花の記載がなく、特徴的な不定芽についても実にあっさりした記述であった。2016年の再記載でその点は補われたが、ホロタイプがある筈のパリ国立自然史博物館MNHNに何故か標本が見当たらず、仕方なく命名規約に従って原記載論文に載った図版(といっても写真)をレクトタイプlectotypeに指定したというのが2018年の論文である。更に再記載論文の株をエピタイプ(同定を補助するための標本)として指定した。

 しかし素人なりに疑問に思う点が2つある。
 今回エピタイプに指定した植物は業者から購入したもので、ホロタイプがないので購入株を原記載で同定するのは良いとして(というかそれしかできない)、産地がTsingy de Bemarahaとしているのは確認が取れていない(Miyata et al., 2016)。それを種同定の根幹たるタイプの1部にして良いのだろうか。動物で言えばペットショップで買ったトカゲを新種記載するとか、タイプ標本にするのと大差ないので、抵抗を感じるのであるが植物の世界では例があるのかもしれない。
 もうひとつの疑問は、元々Descoingsが記載に用いたのはハイデルベルグ植物園にあった個体であるから、この植物園の植物なり標本をエピタイプにした方が確実なのではなかろうか、ということである。一連の論文でこの植物園へコンタクトしたことは記されていないが、もしかすると同植物園には既に標本すら残っていないのかもしれない。
 しかし向こうのスタッフが協力的であれば、ハイデルベルグ植物園の植物がTsingy de Bemaraha産であることは裏が取れたであろう。国内のK. humificaは出自の確証がないが、ハイデルベルグ植物園が入手したものは1998年に採集されたMangelsdorffコレクションの採集者番号RMM 451のクローンである。このクローンはドイツ国内の他の植物園にも分けられたので、こういったものを入手してタイプにした方が良かったのだと思う。もっともこの世界も大人の事情に縛られているだろうから、仕方ないのであろう。

 私は研究者ではないので国内にBryophyllum節のタイプ標本があるというのは何となく嬉しいし、手元のK. humificaがタイプ・クローンになるというのもラッキーなことなのであった。

特徴的なK. humificaの不定芽
フミフィカIMG_9236.JPG

タグ:フミフィカ
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暖冬のラクシフローラ

 犠牲者を多く出した昨年の寒過ぎる冬と暑過ぎる夏を乗り越え、今年はここ埼玉でも比較的暖冬であった。この6年間、毎年冬になるとベランダに水を入れたバケツを置いて氷が張るか見るようにしているのだが、1、2月に氷が張らなかったのは2016年の冬に続き3年ぶり2度目である。今年は普段なら気が緩んでくる2/9~2/15にかけて厳寒の戻りのようなものがあって、陽当たりなしの低温続きで参ったのではある。加えて休みの度に寒かったり、天気が悪かったりで室内に取り込んだカランコエ達を外に出して日光に当ててやる機会が少なく、光不足のダメージが深刻になっている。
 とはいうものの暖冬の恩恵は大きいようで、近所を廻ったときに冬を生き抜いたラクシフローラたちに出会えた。今回はそのスナップである。どういうわけか私はこのラクシフローラが好きで、とても魅せられてしまうのだ(似たようなフェッシェンコイはそこまでではないが)。


この冬、近隣のあちこちでラクシフローラK. laxifloraは戸外越冬した

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いつもは凍死するクローンコエさえ大過なく越冬している
クローンコエ IMG_5851.JPG 
それどころかセイロンベンケイソウまでもが屋外越冬する異常事態が発生していた
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復活!? バイオリウム [others]

 以前も紹介した東京農大というか進化生物研というか、とにかくそこにある温室、バイオリウムへ再び行ってきた。前のブログ記事では訪問してがっかりしたようなことを書いたが、実はその後も某氏の情報に釣られて訪れている。今回もまたカランコエが充実していたとの同氏の情報による再訪である。(Yさん、いつも感謝しております。なんか結局1年おきに行っている気がする。)

 施設の細かな情報は省くとして、食と農の博物館側からの入り口から入ってすぐ左手がカランコエコーナー(実際はマダガスカルエリア)である。前回報告した時に比べ月兎耳と不死鳥以外の種は状態がかなり良くなっていて、種数も若干増えていた(前回8種→今回14種ほど)。
 中でも目を引いたのはガストニス・ボニエリとセイタカベンケイの大型開花株である。特に大きな葉は長さ40cmを超えるのではなかろうか。しかもガストニス・ボニエリは基変種とvar. ankaizinensisの2変種ともある(開花しているのは基変種のみ)。花はかなり大きく、スケールを持っていかなかったのが悔やまれる。
 その他にもシンセパラと殆ど咲き終わっていたがロゼイの花も見られた。シンセパラも以前は申し訳程度にまだ植えて間もないような株があったに過ぎないのだが、今回は葉の異なる2タイプの大型個体がそこそこあった。ベハレンシスは全て基変種であったが、葉の茂り具合や幹の確かさなど状態がかなり良かった。それと1株だけプベスケンスがあり、花序が発達していた。またひとつ不可解なものがあって、最初は徒長したキンチョウ(錦蝶)かと思ったのだがライジンガリのような即座に分からないものであった。

 売り物の月兎耳を除いて今回見た種は前回もあったキンチョウ、ヒルデブランティ、ミロティ、ベハレンシス、不死鳥、ロゼイ、シンセパラ(2タイプ)の他に紅唐印、ブラクテアータ、プベスケンス、セイタカベンケイ、ガストニス・ボニエリ(2変種)、不明種が見られた。
 やはりここは定期的に訪れるべき施設のようだ。ペースはともかく今後も通い続けることになるだろう。

バイオリウムの立派な温室
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一般的に見かけるガストニス・ボニエリの変種Kalanchoe gastonis-bonnieri var. ankaizinensis
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ガストニス・ボニエリ基変種とその花Kalanchoe gastonis-bonnieri var. gastonis-bonnieri
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一見よく似たセイタカベンケイとその花Kalanchoe suarezensis
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プベスケンスKalanchoe pubescens
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シルバスプーンことブラクテアータKalanchoe bracteata
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シンセパラの2タイプKalanchoe synsepala
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立派なベハレンシスKalanchoe beharensis
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Bryophyllumの1種、K. ×rechingeriに酷似するが。。。
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カランコエと紅葉 [others]

 多肉植物の楽しみの一つに紅葉があるという。紅葉というと秋に我が国の野山を彩るあれである。ネット上で調べてみると、これは植物の葉が老化して落葉前に変色する老化現象だという。一部の常緑樹や草本にも見られるというから、一般的な多肉の場合はこの辺りに相当するのであろう。
 葉の変色後の色でアントシアニンによる「紅葉」、カロテノイドによる「黄葉」、タンニン性物質の蓄積による「褐葉」に分けられるそうだ。広葉樹の葉が黄色く染まり、美しい落ち葉が溜まっている光景はイチョウ並木などでお馴染みだが、ふと夏の暑さにやられてイチョウよろしく葉が黄色くなり、バタバタと落葉してしまった着生カランコエのことを思い出した。以前のブログ記事でこれを揶揄して「紅葉」と書いたことがあったが、メカニズムとしては本当に紅葉と言ってよいのだと思う。但し、その後植物がダメージから回復せずに枯れてしまったりするので、とても楽しむ気にはなれない紅葉である。
 夏のダメージの他にも死に際の葉が黄色くなる種は多く、カランコエにおいては「黄葉」は一般的に見られると言えるが、観賞の対象ではない。
 では「紅葉」はどうであろうか。紅葉と書いてモミジと読む。モミジと言えば冬もみじ、この種は冬には紅葉が楽しめる。鮮やかな赤ではなくうっすらと赤みを帯びる程度だが、なかなか美しい。赤くなる種で顕著なのは朱蓮と赫蓮であろう。真っ赤に染まった赫蓮も、葉の裏表で赤と緑のコントラストが美しくなる(ことがある)朱蓮も共に観賞価値が高い。

冬もみじはうっすらと赤くなる程度
laciniataP2260414.JPG 
紅葉している朱蓮
朱蓮P4290029.JPG 

 一方ブリオフィルムはというと、葉がピンクに染まるフェッシェンコイの斑入りなどは特に美しい「紅葉」と言えるだろう。マロモコトレンシスも紅葉するが、色合いは微妙である。
 しかしカランコエ節には珍しい「褐葉」種もブリオフィルムには見られる。K. miniataやK. inaurataは美しいチョコレート色に変色する。単に枯れ葉色というのとは違った趣のある色で、得も知れぬ深みを感じる。

ピンクの紅葉K. fedtschenkoi 'Variegata'
fedtschenkoi IMG_9191.JPG 
K. maromokotrensisも紅葉する
maromokotrensis  sub-adulteIMG_4879.JPG 
K. miniataは褐葉の代表
peltigera-like miniataIMG_4791.JPG 

 上記以外にも明確な紅葉はしなくとも葉縁の赤い縁取りが鮮やかになるとか、少しだけ色づく種もある。もしくはK. rubellaのように模様の部分が紅葉するなんていうのも魅力的だ。嫌いな冬も各種の開花に加えて、またひとつ密かな愉しみが増えたようだ。

模様が鮮やかに際立つK. rubella
rubella IMG_0545.JPG 

タグ:紅葉
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Shaw(2008)の陥穽④ [taxonomy]

 今回でShaw(2008)の論文の紹介も最後になる。今回はroseiについての記述を見てみる。

□Kalanchoe rosei
 この論文で紹介されているのはroseiといっても実際はKalanchoe “Rauhii”の話である。ちなみに当ブログでは昨年あたりからICNの品種名を公式なものと見做して、公式品種名の学名表記は‘ ’で括り、俗な品種名を“ ”で括っている。多少はこだわっているのだ。

 さてShaw(2008)によると、
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欧米に出回る‘Kalanchoe rauhii’(原文の表記)は植物学的には記載されておらず、その名はWerner Rauhに因んでいるとしている。またKarper et Doorenbs(1983)を引用して‘K. rauhii’が交配種かもしれないことをほのめかしている。
 ネット上では‘K. rauhii’の他に‘Dorian Black’とか‘Rubra’といった名でも呼ばれており、また同じ植物がオランダの生産者によって‘Lucky Bells’として広められていてPlant Breeders Right(PBR)まで授与している。(筆者注:“Lucky Bells”の花は“Rauhii”とは少し違うと思う)
 この‘K. rauhii’はKalanchoe rosei subsp. variifoliaに相当し、Boiteau et Allorge-Boiteau (1995)にもイラストが載っている。
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 というようなことが記されており、以前これを鵜呑みにした私は“Rauhii”がK. rosei subsp. variifoliaであると思い込んでしまったが、実際にはK. rosei種群とキンチョウあたりの交配種と考えるのが妥当であろう。

 Shawはこの交配種に関してK. rosei subsp. variifoliaそのものがキンチョウとの雑種起源であろうとしている。そして以前存在していたBryophyllumのHPにて述べられていたK. rosei subsp. serratifoliaはロゼイ×キンチョウ、 K. rosei subsp. variifoliaはロゼイ×シコロベンケイという説を紹介している。こういうのは混乱の元なのでやめてほしい。上記の説は文献的知識には非常に詳しい米国のある大御所的な人物が言っているのだが、彼の説はたいてい根拠が浅く、また同定能力も予想以上に低いことが分かったので惑わされないようにしたい。

 それはともかくShawはここでこの2亜種をK. roseiの変種としてリネームしている。しかしそのことについて植物分類学的な根拠は述べられておらず、K. rosei種群内の一部だけの変更にも賛同できないので、当ブログではこれを踏襲しない。と言っても亜種というステイタスが正しいとも思えないので、単に無用な混乱を避けたいがためである。

 長々と紹介してきたShaw(2008)の論文だが、問題は多いものの力作ではあるのでカランコマニアを目指す者としては外せない一編である。

Kalanchoe “Rauhii”は未記載の自然交配種
rauhii PA080286.JPG

タグ:ラウイ
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