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子宝草目録2-① Suffrutescentes/胡蝶の舞とその仲間 [taxonomy]

 何とはなしに始めてしまった子宝草のリストアップだが、以前紹介したグループの順番は無視して今回から私の好きな胡蝶の舞の仲間を紹介したい。国内でもよく見かけるグループである。薄手の葉を胡蝶(チョウ)に見立てた優雅な和名(本当は園芸名?)であるが、この名で呼ばれる植物が2種あり(というより混同されており)混乱を招いている。その辺の事情はこのブログでも何度か触れているので、詳しくはこちらの記事をご参照ください。
胡蝶の舞の素性(前篇)http://kalanchoideae.blog.so-net.ne.jp/2014-01-18

さて、このグループも構成種を変種レベルで列挙する。変種の中には現在の分類上シノニムとされているものも含むが、区別できそうなものを残した。
・Kalanchoe fedtschenkoi
     Kalanchoe fedtschenkoi var. fedtschenkoi
     Kalanchoe fedtschenkoi var. isalensis
・Kalanchoe laxiflora
     Kalanchoe laxiflora ssp. violacea 
     Kalanchoe laxiflora ssp. stipitata
     Kalanchoe laxiflora ssp. subpeltata
・Kalanchoe marnieriana
・Kalanchoe serrata
・Kalanchoe waldheimii
・Kalanchoe tenuiflora
・Kalanchoe ×lokarana
--------------------------------------------------------------------------------
・Kalanchoe rosei
     Kalanchoe rosei ssp. rosei
     Kalanchoe rosei ssp. serratifolia
     Kalanchoe rosei ssp. variifolia 
     Kalanchoe rosei var. seyrigii
・Kalanchoe ×richaudii

 これを大きく2つに分けると上記の点線から上に挙げたfedtschenkoiやlaxifloraタイプの広い葉を持つグループと点線から下の葉身が細めなroseiグループに分かれる。後者は最近大規模な分類学的な見直しが行われるようなので、後回しにして前者の概観をまとめてみたい。
 このfedtschenkoiのグループは上に挙げたように雑種起源のものも含めて7種+変種が記載されている。この他にも未記載種と思しきものや区別可能な変種あるいは品種として扱えるものが知られる。

 では先ずショップなどを見る限り最も普及していると思われるフェッシェンコイK. fedtschenkoi(よくフェドチェンコイと呼ばれている)から話を始めたい。本来なら胡蝶の舞の和名が与えられているラクシフローラK. laxifloraから始めてもよいのだが、この種を売っているのは殆ど見たことがないのだ。街の植え込みや他人のブログではたまに見かけるのだが、最近は流通していないのだろうか。
 一方フェッシェンコイはよく販売されているのを見かける。胡蝶の舞錦はK. fedtschenkoiの斑入りであるし、“リンリン”という名称(商品名?)のカランコエもK. fedtschenkoiである。ミニ多肉や多肉の寄せ植えとして売られていることも多い。
 嘆かわしいことに、今やフェッシェンコイが「胡蝶の舞」として認識されているようだ。以前述べた唐印やコダカラベンケイ(シコロベンケイ)と同様の現象だ。個人的にこういうことは嫌いなので、当ブログでも遺憾の意を表したい。

 などと書いているうちに長くなってしまったので、これこそ遺憾なのだが話を始めようとした矢先で打ち切って、次回につなげたい。

典型的なフェッシェンコイである胡蝶の舞錦K. fedtschenkoi
fedPA310155.JPG


ベハレンシス・ストレイン PartⅡ [taxonomy]


 前回はベハレンシスの交配品種について書き始めたのだが、近頃は花ものとブリオフィルムにうつつを抜かしているため、途中で気力が途切れて頓挫してしまった。気を取り直して、もうひと踏ん張りしたいと思う。
 さて、ローズリーフやファーンリーフ(オークリーフ)に並んでもうひとつよく知られる品種はファングである。ローズリーフに似るが葉の裏に棘のような突起物がある。これは月兎耳との交配種という説があるが、詳しい情報は不明である。月兎耳と交配して何故葉裏の突起物が生じるのかも謎だ。高さ1.7m位には育つが最大どのくらいに育つのかも分らない。80年代終わり頃から登場して、突起物を「牙」に見立てて‘Fang’ということだろう。

ファング‘Fang’:葉の裏の突起物が特徴
Fang.JPG 

 このファングと近いものにブラックファングがある。これを購入したナーセリーの方は、これがファングの元ではないかと疑っていた。これは「牙」のないファングで、かといってローズリーフではない。
 何気なく育てていたが、あるとき葉の一部に(遺伝学でいう)モザイクのように「牙」が生じ、先祖返りのように思えた。更に誤って折ってしまった葉から発生した不定芽の個体は、葉の裏に突起を持つ「ファング」であった。このことからブラックファングというのは、ファングに生じた枝変わりであろうと思われる。
 従ってこれがファングの祖先系に近い外観なのかは何とも言えない。

ブラックファング'Black Fang'
BlackFang.JPG 

 交配種だろうと思われるが、はっきりしない品種にナナNanaがある。この名称は前述(前回)のRauhの著書によるもので、ISNも踏襲している。しかし個人的にはあまり好きな名ではないので、一般的に知られるブラウンドワーフとかブラウンフォームと呼んでおきたい。その名の通り小型で、特徴はカールした楕円形の葉である。

ブラウンドワーフ'Brown Dwarf'って、褐色矮星のこと?
BrownForm.JPG 

 交配種だか何だか分らないものにミニマがある。カールした切れ込みのある葉が特徴で、高さ50cm程度の小型品種である。栽培条件によっては切れ込みが浅くなってしまう。これの無毛版ともいえるベビーズボトムも小型の矮性品種であるが、かなり稀少で私は見たことがない。

オシャレ系のインテリア店でも見かけるミニマ'Minima'
Minima.JPG 

 大体以上が主なもので、他にも楯状葉のローズリーフとか、米国のGlasshouse Worksで扱っているパナマエンシスなどがあるようだが、全容を掴み切れていない。大型種故、置き場所の問題が絡んで集めるのも難しいので、ベハレンシスの品種についてはこれくらいで打ち止めにしようと思う。


ベハレンシス・ストレイン [taxonomy]

 仙女の舞/ベハレンシスには様々なタイプのものがあるが、今回紹介するものの大半はおそらく園芸品種であろう。他のカランコエ属と交配して作出したものとしては、ローズリーフ、ファーンリーフ、ファングが一般的だ。
 ローズリーフとファーンリーフはISN(International Crassulaceae Network)のHPによると米国で作られたもののようだが、国内外で名称の混乱がある。特に混迷しているのがファーンリーフで、私も以前はこれをオークリーフだと思っていた (実は今でも怪しんでいる) 。ISNの情報で古いナーセリーのカタログがあり、それによるとそのカタログの写真のタイプがファーンリーフで、オークリーフは以前ベハレンシスの原種の記事で触れた長葉タイプに近い。
 但し、このカタログの写真が掲載時というか印刷時というか、間違ってしまった可能性も皆無でないと思う。実際、写真を逆にすると葉形とオークリーフの呼称がシンクロするのだが…..。

これはファーンリーフ‘Fernleaf’か、オークリーフ‘Oakleaf’か?
fernleaf or....JPG 

 上の写真の品種を取りあえず今はファーンリーフとしておくが、オークリーフとして扱っているサイトが多い。国内ではこれをホワイトリーフとかローズリーフと称して売っている事がある。ホワイトリーフは日本で付けた名だろうか。それは良しとして、ローズリーフの呼称は間違いである。
 しかし、間違いには無理からぬ事情もある。以前紹介したWerner Rauh著、Succulent and Xerophytic Plants of Madagascar vol.2でファーンリーフの写真がRoseleafとして載っている。こんな権威者が間違えば、後輩たちは一蓮托生で間違ってしまうものだ。

 実際のローズリーフは下の写真のタイプで、これは仙女の舞として売っていたりするが、ファーンリーフ共々あまり大きくはならない。

こちらが実際のローズリーフ‘Roseleaf’
roseleaf (2).jpg 

 上記の両者ともベハレンシスとミロティの交配種と言われている。タイプの違いは正逆交雑の違いか、交雑自体が遺伝子組み換えで行われているのか不明である。時代を考えると遺伝子組み換えの可能性はないか?
 ベハレンシス錦と呼ばれるのはこのローズリーフの斑入りである。斑が入っていることは入っているが、あまり目立たないことも多い。特に少し葉焼けしたりするともう斑が見えなくなってしまう。

ベハレンシス錦ことローズリーフの斑入り‘Roseleaf Variegata’
Roseleaf Variegata (2).jpg 

 続きはまた次回。


子宝草目録1-③ Scandentes/鉾型葉形とハイブリッド [taxonomy]

 前回は黒錦蝶Kalanchoe beauverdiiの葉の変異を取り上げたが、Descoings(2003)の表現の中で鉾形とか3裂の鉾状というのが黒錦蝶の変異の中では最も特異なものであろう。鉾(ほこ=矛)というのは槍のような古代の武器で現代の我々からすると「鉾型」と言われても想像しにくいだろう。元々は中国の武器であるが、功夫映画でも余りお目にかかれない。ということでここでは垢抜けない表現ではあるが「矢印型」と呼んでおきたい。Descoings(2003)が「鉾型」とした矢印型の葉は、おそらく下の写真のようなものをいうのであろう。
00Cap Sainte Marie.JPG
 
 これに対し「3裂の鉾状」と表現したものは、前々から一変種として名を挙げているユエリKalanchoe beauverdii var. jueliiのことであろう。こちらも矢印型の葉であり、その形状は成長に伴い変化する。色彩は基本的に緑色だが、冬期を経ると黒ずんだ色になる。葉形の変化を追ってみると、
① 若い苗:葉は線形で突起がある。
01juelii.JPG
 

② 少し経つと矢印型になる(写真は冬を越して多少黒くなったもの)。
02juelii.JPG 

③ 成長すると「3裂の『矢印型』」になる。2つの黒斑が現れ、プラナリアのようである。
03juelii.JPG 

 これが黒錦蝶と同一(変)種には見えないが、本当に野生の個体群は他の形状の黒錦蝶に対して隔離機構が働かないのだろうか。そのような研究結果によって各(変)種が統合されたわけではなさそうだし、疑問が残る。
 疑問と言えばDescoings(2003)もThe Plant Listもこのタイプの種小名を「juelii」としているが、Hamet & H.Perrier (1914)の原記載を見るとスペルは「jueli」である。前回載せたHamet(1964)からの引用写真では原記載のスペルとなっており、写真キャプチャーで私が載せたスペルと異なっているのに気づいた方もいらっしゃったのではなかろうか。この辺の命名規約上の問題がありそうだが、ユエリが種や変種として認められていない現在、解決しようとする者は誰もいない。

Kalanchoe jueliの原記載より(Hamet & H.Perrier (1914))
05Hamet & H.Perrier (1914).png 

jueliiにはこのような別タイプの葉のものもある
04another juelii.JPG 

 さて、Scandentesには他に雑種起源の2種が知られる。そのひとつはライジンゲリKalanchoe ×rechingeriで、黒錦蝶K.  beauverdiiと錦蝶K. delagoensisの自然交配種と考えられている。見た目にも両種の形質を持っているが、花は黒錦蝶より錦蝶の特徴が濃く表れる。育て方によっては葉が長く伸びた錦蝶に似た外見となる。
 もう1種は黒錦蝶とシコロベンケイK. daigremontianaの交配種と考えられている ポアンカレイKalanchoe ×poincareiである。こちらはマダガスカルで2回しか採集されていないと言われ、お目にかかれない。いつも引用しているBoiteau et Allorge-Boiteau(1995)やDescoings(2003)ではどういうわけかセイタカベンケイKalanchoe suarezensisのような植物として扱われていたが、その後Descoingsは2005年にこれが黒錦蝶の交配種であると訂正した。そもそも前回参照していたBoiteauとMannoni(1949)ではこれを黒錦蝶の交配種として扱っていたので、その後扱いを間違えたのは不思議である。

つる性のハイブリッドKalanchoe ×rechingeri
06x rechingeri.JPG

  長くなるが交配種にはもうひとつある。米国のThe Glasshouse WorksでKalanchoe beauverdii Hybridという名で販売しているものは、外見は前回紹介したscandensタイプによく似るが、花の写真を見ると確かに交配種である。この植物の起源については不明であり、入手を試みてGHへ連絡したが、米国内にしか送れないとあっさり断られてしまった。
 どなたかこの植物の入手方法をご存じの方がいらしたら、御教示頂けると大変嬉しいです。
 参照URL  http://www.glasshouseworks.com/succulents/succulents-k/kalanchoe-beauverdii-hybrid


子宝草目録1-② Scandentes/黒錦蝶の葉形変異によるタイプ分け [taxonomy]

 いつも無駄な前振りが目立つ当ブログだが、この前の記事は唐突に始めてしまった。読み返すといきなりの展開で訳が分からないと思えたので、今更だが補足しておきたい。ここで試みているのは子宝草(ブリオフィルムの系統/葉縁に不定芽を形成するタイプ② 参照  http://kalanchoideae.blog.so-net.ne.jp/2016-08-14 )の可能な限りのリストアップである。それをBoiteauとAllorge-Boiteau(1995)の4グループに沿って行おうと思っている。リストアップしただけでは芸がないので、なるべく写真を載せたりしようと思っているが、内容的には薄っぺらな紹介記事に過ぎない。ともあれ、そういう趣旨でポツリポツリと続けていこうと思っている。


 さて、前回は黒錦蝶Kalanchoe beauverdiiの変種について触れたが、現在は分類学的に認められていないものばかりで、その区別も曖昧に思える。しかしながらKalanchoe beauverdii var. jueliiのように一目瞭然で葉形の異なるものは外見だけで区別できそうである。Descoings(2003)によれば黒錦蝶の葉は変化に富み、長さは1.5~11㎝、幅は0.3~4㎝(こんな幅広の葉は見たことないが…)、形状は線形、細い匙形、鉾形、卵形から楕円形、3裂の鉾状であるとしている。
 日本での呼称は「黒錦蝶」であるが葉は必ずしも黒くなく、緑色の葉を持つものが多い。国内で栽培していて冬の寒さに当たって黒ずんだりするが、基本的な色調は緑色なのではないかと思える。よく見かけるタイプは季節に関係なく黒っぽい葉であるが、原産地でもこのタイプが優勢(あるいは一般的)なのだろうか。
BoiteauとMannoni(1949)及びRauh(1995)の基変種K. beauverdii var. beauverdii(=var. typica)も葉形や色彩が不明である(正確に言うと調べきれなかった)。

 一方、別種として記載された後に本種のシノニムとされ消えた名があり、それらのタイプが元々記載されたときには葉形の違いに着目されていたようだ。Kalanchoe属としての記載とBryophyllum属としての記載、またはそれらのbeauverdiiの変種としての記載があるのでシノニムの数は多いが、まとめると次の4種の種小名に要約される。
beauverdii
juelii
costantini
scandens
  このうちbeauverdiiは本種なので抜かし、jueliiは特徴的な「3裂の鉾状」の(というより矢印のような)葉を持つので、容易に区別できる。残る二者は共にbeauverdiiより(割合として)幅広の葉をしておりscandensの原記載が入手できず詳しい区別がつけられないが、costantiniは葉が披針形とされる。となると分類学上の種としては1種で、変種も認められていないが趣味の世界(園芸上とも言える)は分けてもよいのではないだろうか。自分の見た範囲の限られた知見では、上記の4タイプは区別しておいても良さそうだ。勿論、どのタイプに入れるか迷うようなものもあるとは思うが。
 これについてはくどくど説明しても仕方ないので、幾つかサンプルを示してみる。

beauverdiiタイプ:通常のものの他に緑色で大型のものがある。
01_beauverdii.JPG

scandensタイプ:巾広の葉を持つもの。scandensは上るものの意味で、ヘクソカズラの英名でもある。
02_scandens.JPG

juelii:Hamet and Marnier-Lapostolle(1964)より
03_IMG_0600.JPG

costantini:Hamet and Marnier-Lapostolle(1964)より
04_IMG_0599.JPG

これは具体的にはこのような葉形のものであろうか。
05_scandens 2.JPG 

 ネット検索すると産地によって様々なタイプが見られるようで、非常に興味深い種である。
 特殊な葉を持つjueliiについては、次回で改めて取り上げたい。


タグ:beauverdii