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新世界へ... [others]

 以前からネットや雑誌上の情報で、切り花のカランコエがあるということは知っていた。クヌート・イェプセン社でもQueen Cut Flowersという切り花のシリーズを販売していてHP上でも紹介している。しかし、切り花のカランコエを実際に目にしたことはなかった。園芸の趣味はあっても、生け花的な趣味はなかったのだ。

 と書いて誤解を招くといけないので少し脱線すると、同じ「花」を対象としていても接し方・楽しみ方は人それぞれで、良し悪しや優劣の問題ではない。
 このブログでのニックネームから分かる人には分かるかもしれないが、私は(メインの興味対象ではないが)淡水魚にも関心があって、ある類の魚に分類学的興味を持っていたことがある。しかし同じく淡水魚が好きと言っても飼育を趣味とする人、釣りを楽しむ人、料理を食べるのが好きな人などアプローチの仕方は人によって様々であり、各々別の分野である。そういう意味で私にはカランコエを生けて飾ったりする趣味はないということで、他意はない。

 少々遠回りしたが、要は切り花売り場は覗いたことがなかったので、必然的に切り花カランコエには遭遇しなかったということである。
 そんななか、2月の初めの会社帰りにふと駅の花屋の切り花が目について、近寄ってみると丈のある八重咲きのカランコエであった。黄色と赤色の2本が容器に挿してあり、結構いい値がついていた。その日は金曜であったが、写真を撮らせてもらおうと思って週明けの月曜に再び花屋を訪れると、既に売れてしまったのかカランコエの姿はなかった。
 少し落胆してふと目を上げると、別な場所にセイロンベンケイソウの花序が大きな蕾(実際には萼筒)をたわわに付けて切り花として売っていた。以前ネットで見てこれが「カランコエ・グリーンアップル」の名で出ていることを知っていたが、初めて目にした。早速店のお姉さんに撮影の了解を頂いて2枚撮影した。
 しかしセイロンベンケイソウの萼筒は大きく見栄えもよかった。我が家では大きく育てたことがなく、花も咲かせたことがないが、今度少し頑張ってみようかと思えた。

 切り花という新しい分野を見出して、またひとつ冬の楽しみが増えた。

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真冬の秘かな愉しみ [others]

 春の確かな兆しが見え始めた今日この頃、過ぎ去りゆく長かった冬をふと顧みた。

 昔から寒いのは苦手で、冬は嫌いである。ところが巷では「わたしは冬が好き」と豪語する人もいる。スキーシーズンだからとか、蝶がいないからとか理由は様々だが、彼(女)等は冬が来るのを楽しみに待っていたりするのだ。自分はと振り返ると、学生時代なら冬は試験の時期で、これを乗り越えればあとは何とかと耐え忍び、その後社会人になっても期末の決算期を乗り切れば楽になるなど、とにかく冬は我慢の時期でしかなかった。カランコエの趣味を始めてからは、冬が更につらいものになったことは言うまでもない。冬をじっと耐えて春を待つというのは、私たち温帯に住む生物の宿命だと思う。
 しかし人間の中には、上記のように脊椎動物にあるまじき反応を示す者もいるのだ。改めてよく考えると、冬が好きな人は「冬に楽しみが待っている」人なのだと理解した。

 カランコエの趣味が高じてからは辛いの一言だった冬であるが、いつの頃からか心境に変化が生じてきた。ベランダのフレームに置き去りにした植物に花序が発達し始め、2月になると少しずつ蕾が膨らんでくる。やがて早いものは2月中頃から冬に抗い開花を始め、生命の営みを存続させている姿に愛おしささえ覚える。そしてこの長い冬を何とか乗り切れることに期待するようになった。それは淡い期待ではあったが、何の希望もなく耐えていたときと比べればその差は大きかった。
 そしていつしかフレーム内のカランコエの開花を待ち望むようになった。「待ち望む」ということは「楽しみにする」ということでもある。どうやら私も2月に楽しみが待っている身分になったようだ。

 一方で下垂型カランコエの鉢花はこの時期にのみ売られているので、1年のうち入手する唯一のチャンスは冬期である。そのためか、ふと思うとここ2,3年は冬に園芸店を巡るのが恒例となっていた。そんなことをすると花ものを衝動買いしてしまうリスクはあるが、厳しい冬に射す一筋の希望のように思えて、いつしか冬の園芸店巡礼は楽しみに変わってきている。

 冬は犠牲者を出したり、大きなダメージを被ったりするので今だに好きにはなっていないが、最近はかなり「暖冬」になったようだ。

フレーム内に詰め込まれたカランコエも2月に花が咲く
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暖かな休日は県内のこんな所を巡ったりして
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カランコ売り場発見!
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その結果、リスクマネジメントに失敗して衝動買い
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帰化植物としてのカランコエ [others]

 主にブリオフィルム節の話となるが、いや、遠回しな言い方はやめよう。思いっきり子宝草の話だが、国内にも何種かのカランコエが帰化している。それも北海道を除く3つのメインランド全てに渡る。
 全国農村教育協会の『日本帰化植物写真図鑑〈第2巻〉』によると錦蝶K. delagoensisが伊豆半島、高知県、宮崎県で野生化しているそうである。またセイロンベンケイソウK. pinnataも沖縄で帰化しているとあるが、内地では見られないようだ。
 錦蝶はマダガスカル南部が原産なので北部原産のセイロンベンケイソウに比べて耐寒性があるのだろう(程度問題ではあるが)。言うまでもないがマダガスカルは南半球なので北部が赤道方向である。
 この本の情報に付け加えると2種とも沖縄、小笠原で帰化している。小笠原諸島では錦蝶は父島、セイロンベンケイソウは父・母・兄・弟の各島で見られる。

 上記は文献的に確認できるがネット情報や人からの伝聞によると沖縄ではほかにセイタカベンケイK.  suarezensisとラウイK. ‘rauhii’が見られるようである。また宮古島にはロゼイK. roseiが帰化しているらしい。これらのカランコエを沖縄で、あるいは内地に持ち帰って育てて花を咲かせたというような情報を個人のHPやblogを漁って目にした。またラウイは私の娘も沖縄に行った際に見つけて写真を撮ってきてくれた。(http://kalanchoideae.blog.so-net.ne.jp/2015-05-30)
 セイタカベンケイは何故か沖縄ではK. tsaratananensisの学名で知られるようだが、この学名のカランコエは全くの別物である。セイタカベンケイK. suarezensis 自体は他種と分類学上の多少の混乱があるが、いずれその辺も整理して紹介したい。しかし沖縄本島ではかなり蔓延っていると思われるこの種だが、不思議なことに沖縄と同じく錦蝶とセイロンベンケイソウが帰化している台湾では見られない(数年前に一度導入されたことはあるようだ)。ラウイやロゼイは園芸植物が逃げ出したものと思うが、セイタカベンケイは売っているのは殆ど見たことがないし、園芸的にもあまり知られていない。何故沖縄で帰化するに至ったのであろうか。

 そこである仮説を思いついた。セイタカベンケイは米軍基地に持ち込まれたもの(人為的かそうでないかは問わない)が、ベースキャンプの外にも広まったのではないか。但し、何の証拠もない単なる「おはなし」である。だが何故そう思ったかという根拠はある。
 沖縄の帰化動物として有名なシロアゴガエルPolypedates leucomystax は、1970年代のベトナム戦争時に米軍の資材に付いて沖縄に侵入したとされている。海を渡れない両生類はかつて陸続きだった台湾との共通種が4種知られているが、シロアゴガエルに関しては台湾に産するのはPolypedates megacephalusであって別種だ。K. leucomystaxはインドシナ半島産で、沖縄のシロアゴガエルはベトナム産の個体群が起源なのは明らかになっている。
 実はセイタカベンケイもベトナムでは帰化植物として知られており、これが戦争中に何らかの形で持ち込まれたとしてもおかしくはない。シロアゴガエルが侵入するよりは簡単だと思うのだが、どうであろうか。根拠なく米軍のせいにしてしまったが、あくまで個人が疑惑を抱いているに過ぎない。(実際は沖縄のものがベトナムに持ち込まれていたとか…)

 なお、昔書店で立ち読みした沖縄の植物図鑑にはセイロンベンケイソウなどの他に仙女の舞も載っていたが、これが本当に帰化しているのかは不明である。

セイタカベンケイK. suarezensis 
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沖縄本島採集のセイロンベンケイソウK. pinnata
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温室のカランコエ;新宿御苑/経過観察あるいは定期巡回 [others]

 4月に2年振りに新宿御苑を訪れてみた。2年前と比べて外国人観光客の比率は一層増加していた。欧米人も多いがアジア人も多く、日本の花見の風習が有名になったのと関係がありそうだ。
 かくいう私も花見に行ったのだが、それは表の楽しみで裏の楽しみは温室である。2年前には3m級の仙女の舞と月兎耳の他、特別室にリュウキュウベンケイソウが幾鉢かあった。それらはどうなっているであろう。

 今回はというと、温室入り口近くに「絶滅危惧の植物」と題してリュウキュウベンケイソウの開花株が一鉢置かれていた。特別室には一鉢も見当たらなかったので、現在は別棟で栽培しているのだろう。ということは、開花時期に来なかったら見られなかったかもしれない。絶滅危惧というだけで、花のないリュウキュウベンケイソウは展示してくれないような気がする。
今回はかなりラッキーであった。何しろ特別室のようなガラス越しではなく、鉢はむき出しで置かれていたのだ。写真撮り放題である。思わずまとわりつくようにして、かなりの枚数を撮ってしまった。咲いている花には5花弁のものもあった。
 以前も書いたことがあるが、何故かリュウキュウベンケイソウ(沖縄産)には5花弁の花が良く見られる。御苑のリーフレットに載っている写真も5花弁だ。ネット上にも5花弁が多く見られる。しかし、国外の個体では通常の4花弁ばかりである。
 沖縄産も一つの花序に咲いている花の全部が全部5花弁ではないので、たまたまそういう遺伝子を持った個体から無性生殖で増やした個体を各地の植物園に分配した結果なのか、もともと沖縄の個体群に見られる特徴なのか。
 1982年の「日本の野生植物 草本Ⅱ」(平凡社)では花弁は4倍性との記載だが、ちゅら海財団によるリュウキュウベンケイソウの一連の研究報告書の写真には5花弁の花が映っている。5花弁の遺伝子を持った個体からの拡散という前者の可能性の方が高いかも知れない。
 ついでながら御苑のネームプレートでは本種の学名がKalanchoe integraになっているが、現在はKalanchoe spathulataである。以前来たときは、絶命危惧種の説明パネルがあり、そこの学名はK. spathulataになっていた。Kalanchoe integraはKalanchoe deficiensのシノニムでアラビア半島産の赤花のカランコエである。

受付に置かれた花のように展示されているリュウキュウベンケイソウKalanchoe spathulata
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花弁が5枚の花が混じっている
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葉は匙状
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 さて、御苑温室の奥地へと歩を進め乾燥地エリアへ行くと、一昨年も見た仙女の舞が健在といえば健在だった。元気そうではあったが、以前は曲がりくねって頭上高くそびえていた部分は折れてしまったのか、背は低くまとまっていた。その代り幹の中途から分岐した若くて小さな枝に花序が出ていた。既につぼみもできている。花そのものが見られなかったのは残念であるが、貴重なのでこれも写真を多く撮らせて貰った。

葉が生い茂る仙女の舞Kalanchoe beharensis
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花序とつぼみ
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 前回あった月兎耳はなくなっていたが、ふと上の方を見ると、擬岩の小さな棚部分にフェッシェンコイKalanchoe fedtschenkoiが生えている(植えてある?)のが見えた。かろうじて花も咲いている。
 こうして今回も3種のカランコエを確認できた。あまり頻繁に訪れても変化はなさそうであるが、定期巡回してもよい温室だと感じた。

頭上にフェッシェンコイKalanchoe fedtschenkoiを発見
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花も咲いていた

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タグ:新宿御苑

Kalanmaniaへの長い道 [others]

 先週、BRUTUS(雑誌)を買ってしまった。
 特集は「まだまだ珍奇植物 Bizarre Plants Handbook 2」だ。
 残念ながらカランコエは大阪市の「咲くやこの花館」の紹介欄にラウイの花の写真が小さく1枚載っているだけだ。子宝草を除けばカランコエは珍奇植物ではないから仕方ない、というか当然だ。嬉しいのは「カランコエ・ラウイー」と表記されていたことだ。この品種をラウイと呼ぶ人は殆どいなくて、皆「ラウヒー」と呼んでいる。私はささやかに抵抗して「ラウイ」と呼んでいるのだが、賛同を得られた気分だ。

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 雑誌の内容はなかなか楽しめた。多肉マニアには有名であろうヴェルナー・ラウ教授(上記ラウイの語源の人)の遺産の記事も興味深かったし、植物マニアの世界も垣間見えて面白かった。それと同時に植物マニアを公言できるようになるまでには、まだまだ道が遠いことを実感した。

 20数年前、動物マニアを自認していた私は、ある日街の本屋で「自然と野生ラン」という雑誌を見つけ、衝撃を受けた。植物の世界ではこんなマイナーな分野でさえ雑誌が出ているのか!(と当時何も知らない自分には思えた。)
 動物では考えられないことだった。なにしろ金魚や蝶やニワトリなど比較的メジャーなものでも専門誌などなかったのだ。「自然と野生ラン」クラスとなると「林床と多足類」とか「ミジンコとホウネンエビ」レベルの雑誌が出版されているのと同じだ。そんな雑誌があったら後先考えずに定期購読を申し込んでしまうだろう。
 またある出版社に、そこで出版している図鑑に載っていたバーバートカゲの写真の撮影場所について問い合わせがあり、後日その写真の背景に写っていたモウセンゴケが根こそぎなくなっていたという話を聞いたり、ニュースでもレブンアツモリソウの盗掘が取り沙汰されるなど節操のないエピソードが植物マニア恐るべしっ、との感を強くした。

 植物の栽培技術は動物の飼育技術と比較して確立されているという点で高いレベルにあり(ドイツの動物マニアは別格であるが)、コレクターの熱中ぶりも凄まじく、大いにライバル心を掻き立てられた。
 しかし金も時間もなかった私は、大がかりな設備構築とか高価な種類の購入というスーパーマニアにありがちな方向へはいかず、文献収集の道に走ったのである。結果として人脈も出来てそれなりの成果もあり、その筋ではそこそこのマニアとなったのであるが、植物はチト勝手が違う。
 マニアの層も厚く、文献だけで太刀打ちできる世界ではない。現物の植物も試行錯誤で育てているが、置き場所が限界でコレクターにまでは至れない。開き直って花がきれいとか、面白い葉だとか言って楽しんでいれば良いのだろうが、マニア気質の性でそれができない。どうしても分類学的な興味が先行してしまう。
 この先どう進めば良いのやら、マニアへの道は未だ遥か彼方だ。


タグ:Kalanchoe mania