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子宝草目録2-⑤ Suffrutescentes/その他の近縁種 後編 [taxonomy]

 前回はラクシフローラ型の仲間を紹介したが、今回はその続きである。

 この仲間で一番特徴的な葉を持つのがセラタK. serrataである。ラクシフローラ型の他種と混同する恐れはないにもかかわらず、この植物に関しては誤認が甚だしく、googleで画像検索しても本物の写真が殆ど引っかかってこない。海外では多くの人が不死鳥の類(この言い方は不自然ですが、近い将来別の記事で解説予定です)をこれと勘違いしているようだ。種小名は「鋸歯のある」の意なので、確かに不死鳥類は鋸歯が目立つのだが、全くの間違いである。また国内ではKalanchoe節に属すると思われる種が「セラタ」の名で販売されているらしく、ネット上に鈍鋸歯のある一般的なカランコエの写真がヒットする。
 更に書物を見てもSajeva,M. and M. Costanzo(2000)"SUCCULENTS Ⅱ: The New Illustrated Dictionary"とか佐藤(2004)「世界の多肉植物 2300種カラー図鑑」といったスタンダードなものでさえ、K. laxiflora ssp. violaceaとおぼしき植物をKalanchoe serrataとして写真を載せている。僅かに小学館の「園芸植物大事典」に載った写真が本物と思われる。

 セラタはアンドリンギトラAndringitraを中心としたマダガスカル中南部に分布しているとされ、1947年にMannoni & Boiteauが記載している。幸いなことに原記載図が添えられているので、不死鳥やラクシフローラと似ていないことが一目瞭然である。何故このような誤謬が蔓延っているのか不思議だが、Lexiconの著者のJacobsenが"A Handbook of succulent plants”にKalanchoe serrataと称してK. roseiの変種であろう植物の写真を載せている。この植物は細い葉で葉縁全体に鋸歯があるので、これを不死鳥類と勘違いした人々がK.serrata=不死鳥類という誤謬を流布したのではないかと思われる。


セラタKalanchoe serrataの原記載図(Notulae systematicae 13:151, 1947)
Notulae systematicae.jpg 

実際のセラタはこのような植物である

serrataIMG_5179.JPG

 

 さてラクシフローラ型の最後の1種は葉が大型になるワルトハイミィKalanchoe waldheimiiである。学名はラテン語なのでラテン読みでも英語読みでもよいが、人名由来の種小名はその人名の発音で読むのが一般的だ。しかし通常はなかなか元の人名がどこの人で何語の発音が良いのか判断するのは難しい。Waldheimはロシア人なのでこの植物の名はロシア人名のカタカナ表記に倣ってワルトハイミィとしたが、発音からするとウォールトヒムイと書いた方が近いかも知れない。とりあえずここではワルトハイムと読むことにして種小名はワルトハイミィとし、いずれどこからかクレームが来たら直そうと思う。

 ワルトハイミィの葉の形状はフェッシェンコイと似たようなものなので、若くて葉の小さい株では区別が難しい。フェッシェンコイより葉が肉厚な印象はあるが、感覚的なものでしかない。たまたま売っていたとしても見分けがつかず、狙って入手するのは難しいかも知れない。マダガスカル中部原産。


フェッシェンコイによく似たワルトハイミィK. waldheimii
waldheimiiIMG_5669 (2).JPG 


 改めてリストアップしてみるとラクシフローラとフェッシェンコイの区別さえつけば、フェッシェンコイとロカラナ・ワルトハイミィを混同することはあっても、マルニエリアナ・セラタ・テヌイフローラは識別が容易なのでそれほど混乱しないかもしれない。むしろラクシフローラの種内変異の方が難解かも知れない。


 ラクシフローラ型の現在知られている種については以上である。

子宝草目録2-④ Suffrutescentes/その他の近縁種 前編 [taxonomy]

 ラクシフローラ K. laxifloraとフェッシェンコイK. fedtschenkoiの説明でかなりかかってしまったが、このグループのその他の仲間についても見てみたい。Suffrutescentesは最初の回で触れたようにラクシフローラ K. laxifloraの種群とロゼイK. rosei (ローズィという方が正しいかな)の種群に分かれる。ロゼイ種群に関しては色々と問題があるので後回しにして、まずはラクシフローラ種群の残りの種について述べていきたい。


 この仲間はどれも似たり寄ったりで区別が難しい。前々回ラクシフローラ K. laxifloraの最後に載せた写真のものは国内でたまに見かけるものであるが、これを単品で葉だけ見るとフェッシェンコイにも似るし、その他の種にも似る。花を確認しないとラクシフローラ K. laxifloraとは分からない。将来このタイプが詳しく調べられて実は別種だったという結末になる可能性も皆無ではない。慣れてくると各種の区別はつくようになるが、区別がつきにくい(言い換えると特徴が掴みにくい)種については花を見るしかない。


 さて、ラクシフローラとフェッシェンコイ以外で良く見られる種はマルニエリアナK. marnierianaであろう。葉は先の2種より小型で葉縁に明確な鋸歯や鈍鋸歯はなく、若干の凹凸に不定芽が生じる。このグループとしては葉が特徴的なので、小さな苗でなければ他種との区別はつくと思う。花筒は他種に比べて太くがっしりした感じがする。マダガスカル南東部に自生し、フェッシェンコイとは分布域が重なっている。


マルニエリアナK. marnieriana 最近は分からないが、以前は頻繁に売られていた
marnierianaP5100044.JPG
marnierianaP1270330.JPG 
 

 幼い苗の時にはマルニエリアナによく似るが成長するにつれてフェッシェンコイのような葉になり、さらに成長すると葉柄近くまで鋸歯が生じるようになるのがロカラナK. ×lokaranaである。マダガスカル南部のトラニャロ(トラナロ;Tôlanaro)近郊で見つかった自然交配種で、親の片方はラクシフローラと考えられているようだ。しかしラクシフローラの分布域から考えて、疑問は残る。GBIF : Global Biodiversity Information Facilityの情報を見るとラクシフローラは基本的にマダガスカル中東部に集中的に分布しているが、飛んで南部の一部にも分布していることになっている。これがロカラナの事なのか、ロカラナの親個体群なのか判別がつかない。
2005年にDescoingsによって新種記載されているが、文献上もネット上も大した情報は得られない。これが他種との区別のもっとも難しい種かも知れない。


ロカラナK. ×lokarana 成長すると鋸歯が葉の全縁に見られる
x lokaranaIMG_0281.JPG 
x lokaranaIMG_2638.JPG
 

 ネットで色々と検索しているとロカラナによく似た未記載種と思しきものが引っかかってくる。Kalanchoe sp.としてマダガスカル南部のPic St. Louis産としか情報がない。葉はロカラナよりも明るい色をしていて、テヌイフローラにも似ている。写真で見る限り萼筒も花筒もピンク味が強く、美しい。
 このsp.はそもそも見る機会がないであろうから、ロカラナと混同して悩む必要もないと思われる。

 この仲間では上記のマルニエリアナK. marnierianaが小さな葉を持つが、もう1種テヌイフローラK. tenuifloraも葉の小さな種だ。種小名は細い花の意。2004年にアンタナナリボのTsimbazaza 動植物公園での栽培個体をもとにDescoingsが記載した種で、葉は葉縁に少数の鈍鋸歯があり、楕円形、花は種小名の意味のごとく細めである。この種もやや特徴的なので、ラクシフローラやフェッシェンコイと混同することはないであろう。


葉も細長い印象を受けるテヌイフローラK. tenuiflora
tenuifloraIMG_0459.JPG
tenuifloraIMG_3412.JPG