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ベハレンシス・ストレイン [taxonomy]

 仙女の舞/ベハレンシスには様々なタイプのものがあるが、今回紹介するものの大半はおそらく園芸品種であろう。他のカランコエ属と交配して作出したものとしては、ローズリーフ、ファーンリーフ、ファングが一般的だ。
 ローズリーフとファーンリーフはISN(International Crassulaceae Network)のHPによると米国で作られたもののようだが、国内外で名称の混乱がある。特に混迷しているのがファーンリーフで、私も以前はこれをオークリーフだと思っていた (実は今でも怪しんでいる) 。ISNの情報で古いナーセリーのカタログがあり、それによるとそのカタログの写真のタイプがファーンリーフで、オークリーフは以前ベハレンシスの原種の記事で触れた長葉タイプに近い。
 但し、このカタログの写真が掲載時というか印刷時というか、間違ってしまった可能性も皆無でないと思う。実際、写真を逆にすると葉形とオークリーフの呼称がシンクロするのだが…..。

これはファーンリーフ‘Fernleaf’か、オークリーフ‘Oakleaf’か?
fernleaf or....JPG 

 上の写真の品種を取りあえず今はファーンリーフとしておくが、オークリーフとして扱っているサイトが多い。国内ではこれをホワイトリーフとかローズリーフと称して売っている事がある。ホワイトリーフは日本で付けた名だろうか。それは良しとして、ローズリーフの呼称は間違いである。
 しかし、間違いには無理からぬ事情もある。以前紹介したWerner Rauh著、Succulent and Xerophytic Plants of Madagascar vol.2でファーンリーフの写真がRoseleafとして載っている。こんな権威者が間違えば、後輩たちは一蓮托生で間違ってしまうものだ。

 実際のローズリーフは下の写真のタイプで、これは仙女の舞として売っていたりするが、ファーンリーフ共々あまり大きくはならない。

こちらが実際のローズリーフ‘Roseleaf’
roseleaf (2).jpg 

 上記の両者ともベハレンシスとミロティの交配種と言われている。タイプの違いは正逆交雑の違いか、交雑自体が遺伝子組み換えで行われているのか不明である。時代を考えると遺伝子組み換えの可能性はないか?
 ベハレンシス錦と呼ばれるのはこのローズリーフの斑入りである。斑が入っていることは入っているが、あまり目立たないことも多い。特に少し葉焼けしたりするともう斑が見えなくなってしまう。

ベハレンシス錦ことローズリーフの斑入り‘Roseleaf Variegata’
Roseleaf Variegata (2).jpg 

 続きはまた次回。


子宝草目録1-③ Scandentes/鉾型葉形とハイブリッド [taxonomy]

 前回は黒錦蝶Kalanchoe beauverdiiの葉の変異を取り上げたが、Descoings(2003)の表現の中で鉾形とか3裂の鉾状というのが黒錦蝶の変異の中では最も特異なものであろう。鉾(ほこ=矛)というのは槍のような古代の武器で現代の我々からすると「鉾型」と言われても想像しにくいだろう。元々は中国の武器であるが、功夫映画でも余りお目にかかれない。ということでここでは垢抜けない表現ではあるが「矢印型」と呼んでおきたい。Descoings(2003)が「鉾型」とした矢印型の葉は、おそらく下の写真のようなものをいうのであろう。
00Cap Sainte Marie.JPG
 
 これに対し「3裂の鉾状」と表現したものは、前々から一変種として名を挙げているユエリKalanchoe beauverdii var. jueliiのことであろう。こちらも矢印型の葉であり、その形状は成長に伴い変化する。色彩は基本的に緑色だが、冬期を経ると黒ずんだ色になる。葉形の変化を追ってみると、
① 若い苗:葉は線形で突起がある。
01juelii.JPG
 

② 少し経つと矢印型になる(写真は冬を越して多少黒くなったもの)。
02juelii.JPG 

③ 成長すると「3裂の『矢印型』」になる。2つの黒斑が現れ、プラナリアのようである。
03juelii.JPG 

 これが黒錦蝶と同一(変)種には見えないが、本当に野生の個体群は他の形状の黒錦蝶に対して隔離機構が働かないのだろうか。そのような研究結果によって各(変)種が統合されたわけではなさそうだし、疑問が残る。
 疑問と言えばDescoings(2003)もThe Plant Listもこのタイプの種小名を「juelii」としているが、Hamet & H.Perrier (1914)の原記載を見るとスペルは「jueli」である。前回載せたHamet(1964)からの引用写真では原記載のスペルとなっており、写真キャプチャーで私が載せたスペルと異なっているのに気づいた方もいらっしゃったのではなかろうか。この辺の命名規約上の問題がありそうだが、ユエリが種や変種として認められていない現在、解決しようとする者は誰もいない。

Kalanchoe jueliの原記載より(Hamet & H.Perrier (1914))
05Hamet & H.Perrier (1914).png 

jueliiにはこのような別タイプの葉のものもある
04another juelii.JPG 

 さて、Scandentesには他に雑種起源の2種が知られる。そのひとつはライジンゲリKalanchoe ×rechingeriで、黒錦蝶K.  beauverdiiと錦蝶K. delagoensisの自然交配種と考えられている。見た目にも両種の形質を持っているが、花は黒錦蝶より錦蝶の特徴が濃く表れる。育て方によっては葉が長く伸びた錦蝶に似た外見となる。
 もう1種は黒錦蝶とシコロベンケイK. daigremontianaの交配種と考えられている ポアンカレイKalanchoe ×poincareiである。こちらはマダガスカルで2回しか採集されていないと言われ、お目にかかれない。いつも引用しているBoiteau et Allorge-Boiteau(1995)やDescoings(2003)ではどういうわけかセイタカベンケイKalanchoe suarezensisのような植物として扱われていたが、その後Descoingsは2005年にこれが黒錦蝶の交配種であると訂正した。そもそも前回参照していたBoiteauとMannoni(1949)ではこれを黒錦蝶の交配種として扱っていたので、その後扱いを間違えたのは不思議である。

つる性のハイブリッドKalanchoe ×rechingeri
06x rechingeri.JPG

  長くなるが交配種にはもうひとつある。米国のThe Glasshouse WorksでKalanchoe beauverdii Hybridという名で販売しているものは、外見は前回紹介したscandensタイプによく似るが、花の写真を見ると確かに交配種である。この植物の起源については不明であり、入手を試みてGHへ連絡したが、米国内にしか送れないとあっさり断られてしまった。
 どなたかこの植物の入手方法をご存じの方がいらしたら、御教示頂けると大変嬉しいです。
 参照URL  http://www.glasshouseworks.com/succulents/succulents-k/kalanchoe-beauverdii-hybrid