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冬もみじとヒメトウロウソウ [taxonomy]

 一番好きなカランコエは何だろう? この問いにアルボレスケンスと答える事にしているが、自問自答の答えであって、実際にこのような質問を他人から受けた事はない。アルボレスケンスは木本性の種で一番好きであるが、草本性では花ものは別にして何が「一番」好きなのだろう。ブリオフィルムも好きだが、カランコエ節に限定するとやはり種としての特定は難しい。しかし好きなタイプというのは、何となく分かっている。羽状葉を持つ種である。一般に羽状葉というと羽状複葉のことを指す場合が多く、これはセイロンベンケイソウやプロリフェラ、ルベラといったブリオフィルムにみられるマメ科植物のような葉である。対して私の好きな羽状葉は羽状深裂といって一枚の葉に深い切れ込みが入って、ヨモギやイチヂクの葉のような形態となっているものである。
 カランコエで羽状深裂の葉を持つ種類というと、冬もみじやシンセパラ・ディセクタである。そこで今回は冬もみじについて調べた。

 以前このブログで触れた瀬川弥太郎監修「趣味の多肉植物」(1969)では冬もみじの別名である菊司(きくつかさ)の名で記載があり、この種の学名をKalanchoe laciniataとしている。また小林功さんの記事でも冬もみじをK. laciniataとしていた。そのまま鵜呑みにしても安直なので、Descoings(2003)の記載も調べたが確かに冬もみじはK. laciniataのようである。
いつも参照しているKalanchoe de Madagascar(1995)にはこの種のタイプ標本の写真が載っていて、感慨無量な気分を味わった。というのもこれがカランコエの模式種(タイプ種)なのだ。最初に付けられた名はCotyledon Afra folia lato crasso laciniato flosculo aureoと長ったらしい。分かる人は分かると思うが、リンネが二名命名法の学名システムを提唱して導入される前のものだからだ。その後1753年にリンネがCotyledon laciniataとして記載した。他のベンケイソウ科の植物でも同じパターンが多いが、Kalanchoe属も模式種は最初Cotyledon属として記載されている。そして1763年にアダンソンがこの種を模式種としてKalanchoe属を記載した。(ここら辺を分かりやすく書くと長くなりすぎるので簡略化しましたが、要望があればもう少し詳しく書きます)

 さて、冬もみじはDescoings(2003)のリストによると広域に分布しており、モロッコ、アフリカ東部・南部・南西部、アラビア半島、南インドに見られる。以前は東南アジア(マレー半島・インドシナ半島・インドネシア・フィリピン)、中国南部、台湾などにも分布するとされていたが、現在ではアジアのものは別種のKalanchoe ceratophyllaであることが分かっている(Ohba, 2003)。このK. ceratophyllaの中国名が伽藍菜(Jia lan cai)で、Kalanchoeの語源のうちの一説になっている。この種も冬もみじ同様上向きの黄色い花が咲くカランコエ節の植物だが、何故か和名はヒメトウロウソウというブリオフィルム節と紛らわしい名が付いている。ついでに言うと、現在はリュウキュウベンケイソウの変種とされるK. spathulata var. garambiensisもガランビトウロウソウというブリオもどきの和名がついている。

 冬もみじとヒメトウロウソウ(この和名使いたくないなぁ)の区別は冬もみじでは花序の軸に腺毛が密生し、ヒメトウロウソウには腺毛がないとされる。しかし日本で栽培されている冬もみじもそうだが、花序に腺毛がないものも多い。さらに葉も無毛のものと表面に柔毛があるものがあるという。では冬もみじの無毛個体とヒメトウロウソウはどこが違うのか。
 Descoings(2003)と中国植物誌及びOhba(2003)の記載を比べると冬もみじの葉は基本的に三又に深裂して葉先が段々と細くなって尖り、葉縁に鋸歯がある。ヒメトウロウソウは3~5又により深く深裂して葉先は尖らず、葉縁は鈍鋸歯がある。
 冬もみじは学名通り「ぎざぎざのある」尖った葉を持ち、ヒメトウロウソウはもっと細く深裂した葉のカランコエ(学名は角のような葉の意)のカランコエであると覚えておくと区別しやすい。

 長くなったので、冬もみじの変種等の話はまた改めて書きたい。

冬もみじ.jpg
冬もみじ:尖った葉先と細かい鋸歯がある

ヒメトウロウソウ.jpg
ヒメトウロウソウ:葉先は尖らず、鋸歯は大ざっぱ

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