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冬もみじの混迷 [taxonomy]

 今回は冬もみじについての補足と言うか、前回書ききれなかった関連の話題を紹介したい。
 語彙は一緒だが「冬もみじ」と書くとしっくりこない気もするので、今回はカランコエ・ラキニアータと表現する事にする。勿論Kalanchoe laciniataをそのままカタカナにしただけで、冬もみじの事である。本種は基本的に3つに深裂した特徴的な葉を持つが、実は形状・サイズ共に葉の変異は大きいという。そのため様々な個体群が別種として記載されてシノニムが生まれた。昔日の植物学者は採集した標本で分類していたのも一因であろう。これを育成したり、繁殖させたりすればまた違った展開になったに違いない。前回の記事にコメント頂いた、いずみっくさんの情報ではヒメトウロウソウの葉の形状にも変異があって、リュウキュウベンケイソウと区別がつかない個体が少なからず発生するそうだ(いずみっくさん、情報有難うございました)。
 現在は多くのシノニムが整理されたが、1935年にFont Querが記載したカランコエ・ファウスティKalanchoe faustiiは、1977年にMairer編のFlore de l'Afrique du Nordでベンケイソウ科を記したRosalesが、これをカランコエ・ラキニアータの亜種Kalanchoe laciniata ssp. faustiiとした。この亜種は羽状葉にならず、特徴的なので現在も別種として扱われる事もある。原記載は全く読めなかった(何語? 全部ラテン語?)が、再記載を見るとモロッコのTiliouine周辺の固有種のようだ。いつも参照しているDescoigs(2003)のリストでは、カランコエ・ラキニアータのモロッコの自生は古代に人為分布した可能性も示唆している。しかしその事とファウスティとの関連は不明だ。
 Descoigs(2003)もこれをカランコエ・ラキニアータの亜種扱いにしているが、最近では独立種Kalanchoe  faustiiとしていることも多い。いずれにしても冬もみじ型のラキニアータとは印象が異なる。

 最近知ったのだが、羽状深裂のような切れ込みのある葉を総じて「欠刻葉」というようだ。便利なので以後、この単語を使用したく思う。
01ファウスティ.jpg 
ファウスティKalanchoe laciniata ssp. faustii or Kalanchoe faustii:成長した葉牡丹のような感じで冬もみじとは印象が違う
02冬もみじ.jpg 
冬もみじKalanchoe laciniataの若い個体、まだ葉に深裂が生じていない

 カランコエ・ラキニアータの広域分布と形態の多様性が分類的な混乱、というより分類の整理が進まない要因だが、今後もヒメトウロウソウのように部分的に解明されていくことを期待したいものだ。原種もさることながら、園芸品種でもカランコエ・ラキニアータとの交配種が知られている。クヌート・イェプセン社が1990年代の終わりに発表したアフリカン・カランコエのシリーズに始まり、2000年代半ばの八重咲きのアフリカン・クイーンがそれだが、埼玉・東京地区では殆ど見つけられなかった。
 仕事や他の趣味にうつつを抜かしているうちに、アフリカンシリーズはいつの間にか収束してしまい、八重咲きのものは入手できなかった。(どこかで見かけた方がいらっしゃれば、お知らせ頂けると助かります。)
クヌート・イェプセン社が元親として使用したラキニアータは実際にはヒメトウロウソウのような他種も混じっていたのではないかと思われる。花ものカランコエとの交配で葉の形状が変化しているだけかもしれないが、下の写真のようなものも見られる。
03IMG_8272.jpg04アフリカン オレンジ花.jpg 
品種名不明だが、葉を見るとヒメトウロウソウと見まごう植物だ

05IMG_8322.jpg
一方、アフリカン・ローズはラキニアータとのハーフというのもうなづける

 ところで「冬もみじ」と呼ばれている植物にはもうひとつ別のタイプも見られる。某有名通販サイトで漆黒蝶と呼んでいるものと同種と思われる。

06IMG_8276.jpg
欠刻葉があり、

07lobata.jpg

冬には紅葉する

08P1120022.jpg

冬期の芽

 これは何かと思って調べてみたが、これが実際のカランコエ・ラキニアータとしているようなサイトもあって、なかなか難しかった。マダガスカル産のカランコエでは該当しそうな種が見当たらなかったので、アフリカ大陸産の文献を漁って斜め読みして検索表を舐めたところ、Flora Zambesiaca (ザンベジ川流域の植物相)に記載文があったKalanchoe lobataが相当した。
 Kalanchoe lobataはジンバブエに産する草本性のカランコエで、詳しい分布はまだ不明となっている。若い苗や冬期の芽には密度は薄いが柔毛が生えており、ラキニアータとはかなり様相が異なっている。(写真参照)


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いずみっく

以前、フローサイトメーターという器械(DNA含量の比を測定できる装置)で、いくつかのカランコエを測定したことがあります。
その結果リュウキュウベンケイとヒメトウロウソウは全く同じ含量、冬もみじは3/4の含量でした。
リュウキュウベンケイの染色体数は2n=4x=68ですので、ヒメトウロウソウは実際数えたわけではないのですが多分同じ4倍体種なのでしょう。
リュウキュウベンケイとヒメトウロウソウは交配可能で、しかも稔性のある子孫が得られます。生殖隔離機構はこの2種間では全く働いていないのでしょう。
一方、冬もみじは、自殖も交配も不可、どうやっても子孫が得られませんでした。DNA含量が3/4ですので、3倍体なのでは?と予想してみました。
冬もみじ=K. laciniataとすると、Knud Japsenは子孫のとれない種から新品種を作ったことになり、どうも変です。
私はかなり長い間K. ceratophylla=K. laciniataではないかと思っていたのですが、いかがでしょうか?
冬もみじは、野生種ではなく、3倍体の園芸品種なのではと思っています。
結局、自分だけでは結論付けることができなかったので、今後このあたりの種類の詳細な調査がされることを期待しています。
by いずみっく (2014-11-06 23:10) 

channa

いずみっくさん

いつもコメント頂き、ありがとうございます。
やはりただ者ではありませんでしたね(^o^)

フローサイトメーターは知りませんでした。私が動物の方のマニアでDNAを齧った(舐めた?)のは、まだ90年代の後半でしたから遥か昔です。分子系統樹から種間系統を考察する程度の付き合いでした。塩基配列の読み込みはオートシークエンサーを使用します。

フローサイトメーターはまた用途の異なる機械のようですが、いずみっくさんのやられていたことは興味深いです。疑問を解決する事は出来ませんが、多少の考察をしてみました。雑談混じりで長くなりそうなので、ブログ記事の方に書かせて頂きます。

今後とも宜しくお願い致します。

by channa (2014-11-09 17:32) 

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