So-net無料ブログ作成
前の5件 | -

臺灣のカランコエ [taxonomy]

 台湾は私にとって思い出深い国だ。この地に(家族抜きで)1週間から半月ばかり滞在したことが3度あり、ずっと山中にこもっていた。惜しむらくはその頃植物への興味がなかったので、そこにも自生している筈のカランコエの事は全く知らず終いであったことだ。今では家族と共に短期間の観光旅行に行くのが関の山だ。いつの日にか、また動植物を見ながらの山歩きをしたいものだ。

 さて、彼の地には自然分布のカランコエが4種知られている。それに加え、少なくともセイロンベンケイソウとキンチョウが帰化植物として見られ、大陸中国並みにカランコエ相は充実している。むしろ単位面積当たりで考えれば、アジアの他国よりもリッチである。
 台湾のネイティブなカランコエは下記の4種である。
・リュウキュウベンケイソウ  Kalanchoe spathulata var. spathulata
・ガランビトウロウソウ    Kalanchoe spathulata var. garambiensis
・コウトウベンケイソウ    Kalanchoe tashiroi
・ヒメトウロウソウ      Kalanchoe ceratophylla var. ceratophylla

 リュウキュウベンケイソウは言うまでもなく、日本(といっても琉球列島のみ)に自生している(orしていた)唯一のカランコエと同種・同変種である。但し、全く同じものかというと疑問符が付く。
 中国語名で匙葉燈籠草(匙叶伽蓝菜)、倒吊蓮、篦葉燈籠草と諸々あり、匙葉燈籠草というのは学名をそのまま翻訳したのだろう。本種の学名がKalanchoe integra ではなくKalanchoe spathulatと認識しての名称なので大したものだと思う。
 台湾の方のHPなどを見ていると、どうも台湾での名称というのは同じ植物に多くの呼び名があるというより、植物のタイプで呼び名が異なっているようにもみえる。例えば匙葉燈籠草は沖縄のリュウキュウベンケイソウあるいはそれとは異なるがアジア産として欧米で良く栽培されるものと同じタイプで、葉の形状がスプーン状のものをいう。これに対しラキニアータKalanchoe laciniataのように3裂の欠刻葉を形成するタイプのものは倒吊蓮、花卉モアフラワーズのマドリッドの葉身を細身にして先を尖らせたようなものは雞爪蓮と呼ばれているようである。勿論、このような認識なくごっちゃに使っている場合も多い。ともあれWEBを漁ると少なくとも上記の4タイプが引っかかってくる。この差が単に形態的に多型の植物であるためなのか、分化が生じているのか、非常に興味深い。

 ヒメトウロウソウ(小燈籠草)はガランビトウロウソウ(鵝鑾鼻燈籠草)と共に名前だけトウロウソウ(=Bryophyllum)だが、花は両者ともリュウキュウベンケイソウによく似た上咲きの黄花で、全くのKalanchoe節である。台湾では雞爪癀などの呼び名がある。フィリピン、大陸中国からインドシナ半島まで広く分布し、ベトナム・ラオスのものは別変種Kalanchoe ceratophylla var. indochinensisとされる。
 私の手元にあるタイ産の個体に比べて台湾(やフィリピン)のものは葉が細く分かれるようで、かつてKalanchoe gracilisとして記載された。これも今一度調査の必要がありそうだ。某氏の御教示によると実生苗はかなりの割合で欠刻葉ではないとのことで、リュウキュウベンケイソウとの関係も研究成果が待たれる。

 リュウキュウベンケイソウとヒメトウロウソウが台湾全土に散見されるのに対して、南部沿岸地方で見られるのがガランビトウロウソウで草丈10cmほどの小型種である。冬季に紅葉?すると葉が深い紫色になり、美しい。台湾のサイトの情報を見ていて紫のタイプと緑のタイプがあるのかと思っていたが、季節による変化のようだ。Ohba(2003)はこれをリュウキュウベンケイソウの変種としたが、独立種Kalanchoe garambiensisと見る向きもある。
 これも稀にヒメトウロウソウのような欠刻葉のものがあるようで、マニア的には貴重である。

 もう1種、台湾南東沖の離島である蘭嶼に産するコウトウベンケイソウはOhba(2003)によるとクレナータKalanchoe crenataの帰化群落と疑われているようだが、Yamamoto(1926)の原記載や海外サイトの写真を見る限り、クレナータとは見えない。特に特徴のない鋸歯が細かな黄花の種である。確かにカランコエ属の分布東限の地で、何故この島にだけ特化した種が存在するのかは謎である。植物の種分化は動物とは違うメカニズムが働くので、私のように動物分類学しか分からない者では考えにくいのだ。

 非常に大雑把だが、以上が台湾産カランコエである。そのうちアジアのカランコエを俯瞰して、台湾のカランコエ相について改めて考えてみたい。

リュウキュウベンケイソウ  Kalanchoe spathulata var. spathulata
lobed spathulataIMG_5383.JPG 

ガランビトウロウソウ  Kalanchoe spathulata var. garambiensis
garambiensisIMG_4484.JPG 

コウトウベンケイソウ  Kalanchoe tashiroiの原記載図(續臺灣植物圖譜vol.2, 1926)
tashiroi.jpg

nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

寒波の洗礼 [others]

 2018/1/22関東地方全域は大雪に見舞われ、その後1週間は低温が続いた。埼玉は最低温度が▲7℃から0℃、最高温度も4℃から8℃といった寒い週だった。我が家のベランダでも1/25から1/28まで4日間毎日氷が張り、朝の気温は▲3℃から0℃だった。いうまでもなく、寒さに弱いカランコエにとっては致命的な期間であった。
 埼玉の冬の最低気温は東京より2℃ほど寒いが、我が家のベランダではここ何年かルトンディフォリアK. rotundifoliaがカバーなしで冬を乗り切っていた。その他にも他の植物の鉢植えの片隅で不定芽から芽を出したBryophyllumも冬越しに挑戦するが、毎年氷が張ると敗退していた。
 今年もまた果敢な挑戦者たちが冬越しを試みたが低温に耐えられず、または雪に埋もれて絶対王者とも思われたルトンディフォリアK. rotundifoliaまでもが敗退した。ここ数年で一番の寒さにカランコエの限界を見た思いだった。

 しかしである、雪に覆われたローズマリーの鉢の片隅で、雪に耐えて生き残ったものがいた。K.×houghtoniiである。親である錦蝶K.delagoensisもむき出しで雪と寒波に挑んで倒れ、もう一方の親シコロベンケイK. daigremontianaなどはビニール2枚掛けで防寒していたのだが、役に立たず死んでしまった。なので雪に埋もれていたK.×houghtoniiが生き残ったことは奇跡的ともいえる。まさに不死鳥である。
 マダガスカル高地に産するプミラK.pumilaやアフリカ大陸南部産の種が生き残る可能性は高いが、Bryophyllumの交配種の耐寒性が強いとは意外だ。次の冬には他の交配種も試してみたい気にさせてくれた。
 一方、市販のビニール掛けフレームに収めたカランコエ達は、ビニールを3重にかけた甲斐があって多少のダメージを負ったものがいたものの、無事に難関を切り抜けてくれた。

昨年までの覇者ルトンディフォリアK. rotundifoliaも無残な姿にIMG_8598.JPG
4重にビニール袋を被せたベハレンシス・ヌーダK.beharensis var. subnudaも虚しく枯死IMG_8590.JPG
錦蝶K.delagoensisは言うまでもなく凍死

IMG_8589.JPG
シコロベンケイK. daigremontianaの抵抗も無意味に半透明にIMG_8597.JPG
雪に埋もれたローズマリーの鉢in the snow.jpg
やはりK.×houghtoniiは不死鳥かIMG_8732.JPG

 因みに東京亜熱帯地区の住民たちも雪の洗礼には敵わず、ほぼ全滅に近かった。唯一ユリオプスデージーの陰で雪を被らなかったのであろうか、ラクシフローラK.laxifloraが一株生き残っていた。僅かな環境の違いが生死を分けることを目の当たりにして、感慨を覚える一件であった。

昨年末に見た美しいプランターもIMG_7337.JPG
無残な結果にIMG_8645.JPG
ユリオプスデージーに守られたラクシフローラK.laxifloraIMG_8643.JPG
ユキノシタは守ってくれなかったIMG_8644.JPG

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

深裂する葉/鹿角景天 [taxonomy]

 カランコエ・シンセパラ・ディセクタという名で知られるカランコエがある。まことしやかにKalanchoe synsepala var. dissectaと学名風に書かれた名は不適格invalidで正式な学名ではない。原記載も存在しない。元々この名を使用したのはRauhの“Succulent and Xerophytic Plants of Madagascar. Vol. 1”(1995)であるが、本文や目次ではKalanchoe synsepala var. dissectaとなっているが、写真のキャプチャーではKalanchoe synsepala cv. Dissectaとなっておりいい加減である。しかし前回マダガスカル北西部高地産のシンセパラは葉が羽状深裂するという情報を書いたが、亜種もしくは変種として扱ってもよいとは思う。
 (取りあえずここでは控え目に品種と呼ぶことにして、)この品種は国内では間違って「デセプタ」と呼んでいることが多いが、「裂けた」という意味のディセクタが正しい。ユーフォルビアではないのだ。この間違いはNHK出版の「サボテン・多肉植物ポケット事典」(1999)によって広められたと思われる。同書では御丁寧にもアルファベットのスペルまでdeceptaと間違えている。

 家で栽培していて一片の葉が最大40cm超まで育ったことがあり、通常タイプのシンセパラより大きくなりランナーも多く生じている。これは個人の経験なので、環境や入手した株の状態で全く違った傾向になることもあり得る。こういうことは動物では結構重要で、書物や雑誌記事を見ていると限られた個体の飼育経験に基づいて得た個人的な知見を、その種の一般的な特性として記していることがある。なので私も今後のブログ記事でも意識して注意していこうと思う。

 この品種のような欠刻葉タイプでもシンセパラ×ディセクタ雑種の実生ものというものがあり、普通のディセクタが白花なのに対し、こちらはピンク色の花である。また個人の経験ではこの雑種は葉差しでの不定芽が生じ易かった。(ここで言う「雑種」という言葉は、遺伝学的な意味でなく日常語として使っている。)

シンセパラ・ディセクタとその花、およびランナー
dissecta A01P5180009.JPG
dissecta A02P4060416.JPG
dissecta A03 PC310180.JPG
  

シンセパラ×ディセクタ(ディセクタ・タイプ) とその花、およびランナ
dissecta B01 P4220326.JPG
dissecta B02 PB060564.JPG
dissecta B03 IMG_9940.JPG

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

癒合した萼/雙飛蝴蝶 [taxonomy]

タイトルの前半をラテン語にするとシンセパラsynsepalaである。
マダガスカル中東部から南部にかけて広く分布するいかにも多肉植物らしいカランコエである。個人的にこの種がかなり好きであるが、(未だ?)バリエーションを集めたりはしていない。カランコエ属では唯一ランナーで増える種とされる。近縁種は他にKalanchoe tetraphylla とKalanchoe berevoensisの2種が知られる。現地ではセミ・ロゼットの形状で自生しているようだが、日本で栽培していると茎も伸びてくる。我が家ではよく徒長していたりする。
 また、自生地の写真を見ると日当たりのよいガレ場のような所で良く育っているが、国内で強光下に置いておくと葉焼けしてしまう。遮光が必要な種には思えないので不思議だ。いつも失敗していてきれいな葉に育ってくれることが少ない。

 通常は葉縁に鋸歯が発達するが、これを欠くものもある。地域によって変異が見られ、最新園芸大辞典(1983)には次のような記述がある。
===引用======================================
a) 葉は白色味強く、縁辺の突起は小さい(イサロ山系産)
b) 葉はオリーブ緑色、強い歯牙縁(南部高原産)
c) 葉は緑味強く、広い歯牙縁(中部高原産)
d) 葉はオリーブ色、羽状深裂(北西部高地産)
============================================
 このうち4番目が ディセクタ(デセクタ)と呼ばれるものであろう。「オリーブ色」がちょっと引っかかるが。地域によって明確に分かれているのなら、各々亜種記載されても良さそうだ。実際記載されて後にシノニムとして消えた名も多いのだから、レビジョンを行ってそれらの名を復活させ、整理してほしいものである。

 花色は我が家にあるものは薄いピンクである。通常タイプのディセクタは白花なので、この違いに何となく面白みを感じる。シンセパラ×ディセクタという両タイプを掛け合わせた実生ものとされるものも出回っており、こちらもピンクの花が咲く。

シンセパラKalanchoe synsepala(葉縁が赤と白)とその花、およびランナー
花の写真、ちやんと撮ってなかった! 白く写ってますが本当はうっすらピンクです
synsepala01 P3010062.JPG
synsepala01 FLP1090224.JPG
synsepala01 ST PC110484.JPG  

シンセパラ×ディセクタ(シンセパラ・タイプ:葉縁が赤のみ) とその花synsepala02 IMG_1118.JPG
synsepala02 FLIMG_8657.JPG

nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

子宝草目録3-④ Bulbilliferae/レプトフィルムの迷宮 [taxonomy]

 Bulbilliferaeには一連のK. ×houghtoniiの仲間以外にもシコロベンケイK. daigremontianaと他種との交雑によると思われるものがある。私の知る範囲で3タイプあり、どれも似たようなものである。
 ひとつ目は国内ではシコロベンケイの細葉タイプと思われているが海外のマニア間ではMoullecと呼ばれるもので、この植物を発見?した人の名がそのまま俗称として使われているが、栽培品種名などはない。米国ではこの品種が導入された2001年当時シコロベンケイと何の交配種なのか憶測が飛び交い、ガストニス・ボニエリ、モルタゲィ、ヨングマンシーなどが疑われたが結果は分からず終いである。
 かなり特徴的な外見であるが不死鳥に比べて葉が長い分、不定芽の生産量が多く不死鳥以上に蔓延る傾向がある。

 ふたつ目は外見上前者と区別がつかない。実際のところどちらが本当にオリジナルなものか分からないと言っても過言ではない。そこで今ここで仮に前者をM1、後者をM2と呼ぶことにして、両者の違いは萼片の先が花筒に密着している(M1)か、外に反り返って開いた状態になっているか(M2)である。つまり花が咲かないことには区別できない。
我が家では既にM1があちこちに飛び火した後でM2を入手したため、M2を4箇所以上に増やさないように注意しているが、超過密で栽培しているため漏洩は免れない。そういう意味では栽培は容易だが、管理は難しい植物だ。

M1:シコロベンケイ細葉タイプMoullec
M1_7163.JPG 

M2:上の写真より若い個体、実際は違いが分からない
M2_7164.JPG 

M1(上)とM2(下)の花、萼に注目
M1 flower.JPG 
M2 flower.JPG 


 残るひとつはISI2007-25として紹介されたParsel Tongueだ。小包parcelではなくparsel?などと不思議に思った名だが、有名な魔法小説に出てくる言葉で「蛇語」みたいな意味らしい。ISIのHPには極端に多肉質になった個体の写真が載っており、その爬虫類のようなイメージからこの名を付けたらしいが、それならもっとましな名を付けて欲しかった。
 HPの説明ではK. ×houghtoniiの中から現れた突然変異のようなことが書いてあるが、ICNによると交配種ではなく、シコロベンケイの一品種ではないかとある。
 M1、M2との大きな違いは成長した株では葉柄が葉身に大きく食い込んで盾状葉となり、しかも葉身の基底部が漏斗状になるので特徴あるカップ状の葉を持つことである。M1、M2の方は盾状葉が現れることもあるが、基本的にはシコロベンケイの葉を細長くしたような感じである。

 これら3種は先に少し触れた長葉のシコロベンケイとは異なり、かなり細長い葉をしている。写真ではあまり実感が湧かないが、現物を見ると全く違うものである。Parsel TongueはともかくとしてM1、M2は多くの不定芽を付けることから、両親の片方はヨングマンシー等ではなくロゼイやK. ×houghtonii類なのではないかと思われる。しかし花はキンチョウに似たK. ×houghtoniiとは違い、長葉のシコロベンケイによく似る。

Parsel Tongue:M1、M2に似るがやや肉厚か
US Parsel TongueIMG_7196.JPG 


 これでBulbilliferaeも大体整理がついたが、まだ謎は多そうだ。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー
前の5件 | -