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街角のカランコエ;東京亜熱帯地区 [others]

 埼玉に棲みついてから人生の半分以上をこの地で暮らしてきた。年齢・経済状況・体力面から考えて、もう脱出は難しい。こんな言い方をしてしまったが、この地そのものが嫌いなわけではない。
 ただ、ここはカランコエの栽培には適さないのだ。

 立派な施設をお持ちの諸兄には関係のない話であるが、マンションのベランダでささやかに楽しんでいる身としては、この地は少しばかり「寒い」のだ。毎日天気予報を確認しているが、近隣の東京と比較して夏の最高気温は1~2℃高く、冬の最低気温は2~3℃(ときには4℃も!)低い。この冬の気温差はカランコエにとって生死を分かつものだ。
 夏は夏で着生種のダメージが大きい。これはベランダという場所の問題かもしれないが、以前高円寺で一戸建ての庭先でシャンデリアがひと夏を平然と越して繁茂しているのを見たことがある。ここよりは過ごしやすいのではなかろうか。

 冬に至ってはこの2、3年渋谷区で観察していると、こちらでは冬期は確実に凍死してしまう花ものなど1年中屋外で育っており、地植えの個体(株と表現すべきか)さえも夏冬問わず順調に過ごして開花している。マンションのベランダに放置気味のフェッシェンコイも1年中野ざらしだが、春には開花している。我が家ではビニール1枚のフレームでは蕾まで出来ても開花には至らず落ちてしまう(ビニールを3重にして何とか開花に至る)。埼玉では枯死してしまうクローンコエも渋谷区では元気だ。

 寒さには若干強そうな紅唐印K. luciaeなど野外で大きく育って、たくさん花を咲かせている。それどころかモンステラさえも冬に屋外で過ごせるのだ。そういえば恵比寿や五反田ではクワズイモも外で育っていた。ここの気候はまさに亜熱帯である。ワモンゴキブリが蔓延っていないのが不思議なくらいだ(一度だけ帝国ホテルの横でつぶれているのを見たことはあるが)。
 
 暖かな環境を求めても誰かの言うように地球温暖化は情報操作によるデマっぽいし(本当に温暖化したらそれも問題だ)、今から亜熱帯の国へ移住する気力もおぼつかない。女々しいことは書きたくないが、羨ましいことは確かである。
 虚しいが現状を受け入れて生きていくしかないだろう。


渋谷区の越冬カランコエ
2016年5月に満開だったプランターは夏にカラカラになって、
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痛んだ赤花の株は処分されてしまったが、この1月に蕾をつけて
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4月には咲き始めた
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地植えの黄花八重咲は2016年5月にもきれいに咲いていたが、
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今年4月にはパワーアップしていた
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道端のプランターではラクシフローラK.laxifloraも元気にしている(2016.12)
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街角の紅唐印K.luciaeも御覧のとおり調子が良い(2016.12)
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タグ:紅唐印

ユエリの謎 ~自己解決~ [taxonomy]

 少し前に黒錦蝶の記事でユエリKalanchoe beauverdii var. jueliiの学名の謎について大言壮語を宣ってみたものの、その後自己解決してしまった。
(子宝草目録1-③ Scandentes/鉾型葉形とハイブリッド:http://kalanchoideae.blog.so-net.ne.jp/2016-11-10)
 要するに単に植物の知識不足だったわけだが、そのまま放っておくのも恥ずかしいので、早めにここで言い訳しておきたい。

 さて、ユエリの謎とは以下のようなものである。
「疑問と言えばDescoings(2003)もThe Plant Listもこのタイプの変種名を「juelii」としているが、Hamet & H.Perrier (1914)の原記載を見るとスペルは「jueli」である。(中略)この辺の命名規約上の問題がありそうだが、ユエリが種や変種として認められていない現在、解決しようとする者は誰もいない。」
ここで私は二重の勘違いをして、この学名の差異を不思議に思っていたことが分かった。

勘違い①
 植物の学名で人名由来の種小名はその元となる人名をラテン語化して語尾に-i(-e)を付ける。動物の場合は単に人名の後に-i(-e)を付けるだけなので、Hamet & H.Perrier (1914)の原記載での学名のスペル「jueli」がおかしいとは思わなかった。
 しかし植物の学名ではこの種小名(や変種名)の由来元となったウプサラ大学のHans Oscar JuelのJuelをJueliusとラテン語化した上で接尾辞の-iをつけるため、「juelii」となるのが正しかったのだ。

勘違い②
 国際動物命名規約(International Commission on Zoological Nomenclature; ICZN)では原記載論文で発表された学名はそのスペルが間違っていようが、ラテン語の文法上間違っていようが、それが正規の学名として採用される。ところが国際植物命名規約 (International Code of Botanical Nomenclature; ICBN; ウィーン規約、現在は国際藻類・菌類・植物命名規約 International Code of Nomenclature for algae, fungi, and plants; ICN; メルボルン規約 になっている)では第23条や第60条により文法上不適切な語尾は修正されてしまうのだ。
 それで原記載のスペル「jueli」は「juelii」に修正されたのだが、この点が動物畑出身の自分には分かっていなかった。

 つまり「jueli」と「juelii」の違いは植物の学名について多少の知識があれば、謎でも何でもない事象だったのだ。私が植物も動物も概ね同様だと思い込んだために恥をさらしただけの話であった。大体同じルールで命名されるなら規約を分ける必要はない。それをわざわざ分けているのだから少しは調べればよいものを、情けない限りである。
 またしても容易ならざる植物マニアへの道を思い知った。

ユエリKalanchoe beauverdii var. jueliiの変わり葉
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タグ:ユエリ

新世界へ... [others]

 以前からネットや雑誌上の情報で、切り花のカランコエがあるということは知っていた。クヌート・イェプセン社でもQueen Cut Flowersという切り花のシリーズを販売していてHP上でも紹介している。しかし、切り花のカランコエを実際に目にしたことはなかった。園芸の趣味はあっても、生け花的な趣味はなかったのだ。

 と書いて誤解を招くといけないので少し脱線すると、同じ「花」を対象としていても接し方・楽しみ方は人それぞれで、良し悪しや優劣の問題ではない。
 このブログでのニックネームから分かる人には分かるかもしれないが、私は(メインの興味対象ではないが)淡水魚にも関心があって、ある類の魚に分類学的興味を持っていたことがある。しかし同じく淡水魚が好きと言っても飼育を趣味とする人、釣りを楽しむ人、料理を食べるのが好きな人などアプローチの仕方は人によって様々であり、各々別の分野である。そういう意味で私にはカランコエを生けて飾ったりする趣味はないということで、他意はない。

 少々遠回りしたが、要は切り花売り場は覗いたことがなかったので、必然的に切り花カランコエには遭遇しなかったということである。
 そんななか、2月の初めの会社帰りにふと駅の花屋の切り花が目について、近寄ってみると丈のある八重咲きのカランコエであった。黄色と赤色の2本が容器に挿してあり、結構いい値がついていた。その日は金曜であったが、写真を撮らせてもらおうと思って週明けの月曜に再び花屋を訪れると、既に売れてしまったのかカランコエの姿はなかった。
 少し落胆してふと目を上げると、別な場所にセイロンベンケイソウの花序が大きな蕾(実際には萼筒)をたわわに付けて切り花として売っていた。以前ネットで見てこれが「カランコエ・グリーンアップル」の名で出ていることを知っていたが、初めて目にした。早速店のお姉さんに撮影の了解を頂いて2枚撮影した。
 しかしセイロンベンケイソウの萼筒は大きく見栄えもよかった。我が家では大きく育てたことがなく、花も咲かせたことがないが、今度少し頑張ってみようかと思えた。

 切り花という新しい分野を見出して、またひとつ冬の楽しみが増えた。

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真冬の秘かな愉しみ [others]

 春の確かな兆しが見え始めた今日この頃、過ぎ去りゆく長かった冬をふと顧みた。

 昔から寒いのは苦手で、冬は嫌いである。ところが巷では「わたしは冬が好き」と豪語する人もいる。スキーシーズンだからとか、蝶がいないからとか理由は様々だが、彼(女)等は冬が来るのを楽しみに待っていたりするのだ。自分はと振り返ると、学生時代なら冬は試験の時期で、これを乗り越えればあとは何とかと耐え忍び、その後社会人になっても期末の決算期を乗り切れば楽になるなど、とにかく冬は我慢の時期でしかなかった。カランコエの趣味を始めてからは、冬が更につらいものになったことは言うまでもない。冬をじっと耐えて春を待つというのは、私たち温帯に住む生物の宿命だと思う。
 しかし人間の中には、上記のように脊椎動物にあるまじき反応を示す者もいるのだ。改めてよく考えると、冬が好きな人は「冬に楽しみが待っている」人なのだと理解した。

 カランコエの趣味が高じてからは辛いの一言だった冬であるが、いつの頃からか心境に変化が生じてきた。ベランダのフレームに置き去りにした植物に花序が発達し始め、2月になると少しずつ蕾が膨らんでくる。やがて早いものは2月中頃から冬に抗い開花を始め、生命の営みを存続させている姿に愛おしささえ覚える。そしてこの長い冬を何とか乗り切れることに期待するようになった。それは淡い期待ではあったが、何の希望もなく耐えていたときと比べればその差は大きかった。
 そしていつしかフレーム内のカランコエの開花を待ち望むようになった。「待ち望む」ということは「楽しみにする」ということでもある。どうやら私も2月に楽しみが待っている身分になったようだ。

 一方で下垂型カランコエの鉢花はこの時期にのみ売られているので、1年のうち入手する唯一のチャンスは冬期である。そのためか、ふと思うとここ2,3年は冬に園芸店を巡るのが恒例となっていた。そんなことをすると花ものを衝動買いしてしまうリスクはあるが、厳しい冬に射す一筋の希望のように思えて、いつしか冬の園芸店巡礼は楽しみに変わってきている。

 冬は犠牲者を出したり、大きなダメージを被ったりするので今だに好きにはなっていないが、最近はかなり「暖冬」になったようだ。

フレーム内に詰め込まれたカランコエも2月に花が咲く
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暖かな休日は県内のこんな所を巡ったりして
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カランコ売り場発見!
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その結果、リスクマネジメントに失敗して衝動買い
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子宝草目録2-③ Suffrutescentes/ふたつの胡蝶 [taxonomy]

  フェッシェンコイKalanchoe fedtschenkoiとラクシフローラ Kalanchoe laxifloraは園芸的にはどちらも胡蝶の舞の名で流通しており、混同されている。本来「胡蝶の舞」はラクシフローラなのだがフェッシェンコイの斑入りのタイプに「胡蝶の舞錦」などという紛らわしい名前を付けるものだから混同されるのも無理はない。更にショップでは斑のないフェッシェンコイが「胡蝶の舞」の名で売られていたりする。これではマニア以外の人に混同するなというのは酷である。
 そこで以前にも一度試みたことがあるが、フェッシェンコイとラクシフローラの判別法に再挑戦したい(前回は失敗に終わっている)。わざわざ「判別法」と書いたのは、同定法とまでは言えない経験的なものだからである。前回から3年を経て、私にも少しずつ分かってきた。

 最初にお断りしておくと、若葉はどちらの種も特徴を現さないことが多いので、特に小さな苗では区別がつかない(正確にはつきにくい)と思って頂きたい。両種の特徴が現れるのは多少成長してからである。更に1、2年栽培すると開花するので、花を見ると区別しやすい。

 といいつつ先ずは葉を比較するとフェッシェンコイは葉柄が短く(殆ど無いことも多い)、葉柄近くに鋸歯がなく葉身の上方にのみ鈍鋸歯があるのが典型的な形である。しかし例外も度々あって葉柄近くから鋸歯が見られるタイプもあるが、どちらも葉の全体的な形は逆披針形である。

フェッシェンコイKalanchoe fedtschenkoiの葉
葉柄近くにも鋸歯のある葉(左) と 典型的な形(右) 
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 一方ラクシフローラは葉柄が顕著で葉縁全体に鈍鋸歯がある(故にシノニムとして消えた名前でBryophyllum crenatumと命名されたのだろう)。そして葉身の基底部に耳状部(反り返った部分)が生じることが多い。しかし耳状部がない変種もあり、成長過程によって生じていない場合もある。

ラクシフローラ Kalanchoe laxifloraの葉
violacea(左)、subpeltata(中央・右)
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ラクシフローラ K. laxiflora(左) とフェッシェンコイK. fedtschenkoi(右)の典型的な葉
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 このように典型的なタイプを比べると両種の違いは明確だが、どちらも変種があり、また変種として記載されていなくとも複数のバリエーションが見られるので、葉だけで判断が難しい場合も多い。
 従って花を比較することになるのだが、下の写真のようにフェッシェンコイの花はオレンジ味が強くて花筒の先は広がっている。一方ラクシフローラでは赤味や朱色が強く花筒の先の開きは少ない。しかし前回述べたようにK. fedtschenkoi var. isalensisでは花は赤みが強く、ラクシフローラでも花筒の先が開くタイプもあるようなので葉と花のコンビネーションで種を判別するのが望ましい。

ラクシフローラ K. laxiflora(左・中央) とフェッシェンコイK. fedtschenkoi(右)の一般的な花
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 以上のようなことを書くと結局は区別がつかないように思われるだろうが、実際には意識して見ていると段々と見分けがつくようになってくる。やはり種特有の雰囲気というものがあり、それは植物に限らず動物にも当てはまる識別感覚と言える。


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